枕は睡眠にとって重要な存在ですが、なかには「枕を使わずにそのまま頭をマットレスに置いて寝る」という選択をする方が増えています。
枕なしで寝ることは、首のシワ防止といった利点がある一方で、寝返りが打ちにくくなったり、睡眠の質が落ちやすかったりといったトラブルも生じやすくなります。
このような事態を理解しないまま枕をなくして寝てしまうと、起床時の体の痛みにつながる恐れがあるため注意が必要です。
本記事では、枕なしで寝ることによるリスクとメリット、「自分に合う枕」の条件や探し方まで解説します。
目次
枕なしで寝ると起きるトラブル
枕なしで寝ると、頭と首の高さが同じになり、首や肩に余計な負荷がかかってしまうことが少なくありません。
さらに、寝返りのうちにくさやむくみ・いびきなど、多くのトラブルが発生する可能性があります。
こうした問題を知らずに続けると、慢性的な肩こりや首の痛み、睡眠障害につながるケースもあります。
ここでは、枕なしで寝ると起こるトラブルを解説します。
- ・寝返りがうちにくい
- ・顔がむくむ可能性がある
- ・肩や首が痛くなりやすい
- ・横向きに寝にくい
- ・いびきをかきやすくなる
- ・睡眠の質が低下しやすい
寝返りがうちにくい
人間は寝ているときに、1日で約20回前後の寝返りをするといわれています。(※1)
寝返りの回数が少ないと、血流が滞り、筋肉のこわばりやだるさを感じやすくなるでしょう。
枕は、首の動きをサポートして寝返りしやすい環境を作っています。
そのため、枕がない睡眠環境によって、気付かないうちによく眠れていない可能性も否定できません。
顔がむくむ可能性がある
朝起きたときに顔がむくんでおり、気分が下がる経験をした人も多いでしょう。
顔がむくむ原因は、顔が心臓より低い位置になるため顔に血液や水分が溜まりやすくなるためです。
とくに、塩分の摂取が多い日やアルコールを飲んだ夜は、むくみやすさが顕著になります。低い枕で寝る場合も同じ危険性がありますが、枕なしで寝るのは低い枕よりもデメリットが大きくなるのが注意点です。
肩や首が痛くなりやすい
人の首には緩やかなカーブがあり、このカーブを維持するには適度な高さの枕が必要です。
枕なしで寝るとこのカーブが潰れ、首や肩周辺の筋肉に緊張が生まれます。その状態が長時間続くと、起床時に肩こりや首の違和感を抱えることになり、慢性的な痛みに発展する恐れもあります。
枕は寝ている間の首にかかる負担を軽減しているため、枕がなくなれば首への負担は増えるでしょう。
横向きに寝にくい
横向きで寝る場合、肩幅の分だけ頭を高く支える必要があります。
しかし、枕がないと頭が下がりすぎて首が傾き、体のバランスが崩れてしまうでしょう。
そうすることで、肩や腕に余計な圧がかかり、血行が悪くなってしびれや痛みの原因になるケースも少なくありません。
横向き寝が落ち着く場合は、枕を活用する方が寝やすい可能性が高いです。
いびきをかきやすくなる
いびきは、睡眠中に鼻や喉などの気道が狭くなることで発生する呼吸の振動音です。
枕なしで寝る場合、首が上を向くため気道が狭まり、いびきが発生しやすくなります。
いびきがひどくなると熟睡が妨げられ、日中の眠気や集中力の低下につながることも少なくありません。
枕に頭を載せることで気道が狭まりにくく、いびきを防ぐ効果が期待できるのです。
睡眠の質が低下しやすい
枕なしで寝た場合、首や肩への負荷、寝返りのしづらさなどの影響により、深い睡眠に入りづらくなってしまいます。
とくに途中で目覚めやすくなったり、起床時に疲れが残ったりする原因にもなりかねません。良質な睡眠には、身体の緊張をほどく正しい寝姿勢を保つことが大切です。
枕なしで寝る人の特徴とは?
枕がないと眠れない人は多くいますが、枕なしが眠りやすく感じる人には特徴があります。普段枕なしで寝ている人は、自分に当てはまる特徴がないか確認しましょう。
- ・うつぶせで寝ている
- ・柔らかめのマットレスを使っている
- ・寝返りが少ない
- ・ストレートネックの人は枕なしで寝がち
うつ伏せで寝ている
うつぶせ寝で枕があると、頭に高さが出る分呼吸がしにくくなります。
枕がなければ頭の位置が低い位置で安定し、寝やすいと感じやすくなるのです。
うつぶせで寝ているときは、腕を枕にしたり枕を胸あたりにおいて寝ている人も多いでしょう。普段の寝方によって、枕が必要ないと感じている可能性があります。
うつぶせ寝で寝る原因が知りたい人は、下記の記事で詳しく解説しているため、ぜひご覧ください。

柔らかめの枕を使っている
使っているマットレスの硬さも、枕の必要性を感じるときのポイントになります。
やわらかめのマットレスは、硬いマットレスに比べて身体が沈み込むため、体の形にマットレスがフィットします。
体の形にマットレスがフィットすると、首とマットレスの間にある隙間が埋まりやすくなるのです。
枕はもともと、首の骨とマットレスの隙間を埋める役割があります。そのため、やわらかいマットレスを使用すると身体にフィットすることで違和感を覚えずに眠れます。
ただし、使用しているマットレスによっては、枕があることで寝姿勢が崩れる可能性も否定できません。
寝返りが少ない
寝返りは寝ているときの無意識な動作ですが、もともと寝返り自体が少ない人だと、枕がなくても寝られる可能性があります。
しかし、枕は寝返りを助ける役割もあり、枕がないことで必要な寝返りができずにいる場合もあるのです。
特に、仰向けで寝ることの多い人は寝返りを打つ回数が少ないため、枕がなくても気にならない可能性があります。
しかし、枕がない状態で寝ていると、寝返りで横向きになったときに首と体の高低差がでてしまい、首の負担にもつながります。
寝返りの回数が少ない人でも、枕が不要なわけではないため注意しましょう。
ストレートネックの人は枕なしで寝がち
「枕なしで寝るとストレートネックが治る」という話を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。そのため、ストレートネックの人は枕なしで寝てしまう人も少なくありません。
しかし実際には、ストレートネックの人が枕なしで寝ると首に負担がかかってしまい、症状が悪化する可能性もあります。ストレートネックの人こそ、自分に合った枕を使用することが大切です。

枕なしで寝るメリット
枕なしで寝る行為はデメリットばかりではありません。
どのようなメリットがあるのか理解しておけば、枕を使うか決めやすくなります。
ここでは、枕なしで寝るメリットを3つ解説します。
- ・枕が原因の肩こりが改善する可能性がある
- ・首にシワが残りにくい
- ・人によっては快適に眠れる
枕が原因の肩こりが改善する可能性がある
枕は寝ている間にかかる首の負担を軽減する効果がありますが、自分に合わない枕を使うとむしろ首への負担が増えてしまう可能性があります。
そのため、自分に合わない枕を使っていることで肩こりが起きている場合は、枕をなくすことで改善する場合があるのです。
しかし、枕はもともと寝ている間にかかる首の負担を軽減する効果があるため、自分に合った枕を使用していれば肩こりの原因にはなりにくくなります。
肩こりがあるからといっていきなり枕なしで寝るのではなく、枕の買い替えを選択肢に入れましょう。
首にシワが残りにくい
枕なしで寝ていると、あごを引いた状態になりにくいため、首のシワになりにくいというメリットが考えられます。
特に高すぎる枕を使用した場合、あごを引いた状態で長時間過ごしてしまうため、シワがつく可能性があるのです。
しかし、枕の高さが自分に合っていれば首のシワが過度による原因にはなりません。まずは枕の高さを見直してみて、改善できるか確認しましょう。
人によっては快適に眠れる
頭の位置が一般的な人に比べて前に出ている人にとっては、枕がないことで首のカーブが理想的な形になり、寝やすいと感じる場合もあるでしょう。
しかし、枕がないことで寝返りをサポートできないデメリットもあるため、必ずしもおすすめできる方法ではありません。さまざまな枕を試しても眠れないという場合にのみ、検討しましょう。
【重要】自分に合う枕の条件
快適な睡眠を得るには、自分にフィットする枕を見つけることが重要です。
高さや硬さだけでなく、寝返りのしやすさや素材の通気性、洗いやすさなども重要な選定基準になります。
ここでは、自分に合う枕の条件を解説します。ご自身の生活スタイルや体格と照らし合わせながら、最適な枕選びに活かしてみてください。
高さ | 頭から首、肩までが無理なく一直線になる高さ |
サイズ感 | 幅60cm以上のゆとりあるサイズ感 |
硬さ | 頭が沈み込みすぎず、しっかりと支えられている感覚がある硬さ |
中材 | 好みの寝心地に合わせた中材 |
お手入れ | 丸洗いできる素材だと衛生的 |
首に負担がかからない高さ
適切な枕の高さは、首や肩への負担を軽減し、自然な寝姿勢を維持するために欠かせません。
枕が高すぎると首が前に倒れて気道が狭くなり、低すぎると頭が落ち込んで首が後ろに反ってしまいます。
仰向けや横向きなど、自分の寝姿勢に合わせて、頭から首、肩までが無理なく一直線になる高さを目安に選びましょう。
寝返りがしやすいサイズ感
寝返りは、体圧を分散させる・血行を促進する・熱や湿気を逃がすといった、睡眠中に体を守るための重要な動作です。
小さすぎる枕では寝返り時に頭がずれてしまい、中途覚醒する原因にもなりえます。
たとえば、幅が60cm以上のゆとりあるサイズ感の枕であれば、動いても頭がしっかり支えられ、安定した眠りが得られます。
頭を乗せたときの硬さ
頭を支える枕の硬さは、首や肩の筋肉への負担を左右する大きな要素です。
枕が柔らかすぎると沈み込みすぎて首が浮いたような状態になり、逆に硬すぎると頭部が圧迫されてしまい、リラックスしづらくなります。
最適な硬さとは、頭が沈み込みすぎず、しっかりと支えられている感覚があることです。
パイプ素材やウレタン、そば殻など、素材によって硬さやフィット感は大きく異なるため、店頭で実際に寝て試してみて、自分に合った硬さを見極めましょう。
好みの寝心地を実現する中材
枕は中材の種類によって、枕の通気性・弾力性・感触が大きく変わります。
たとえば、通気性を重視するならパイプやビーズ素材、包み込まれる感触を好むなら低反発ウレタンが向いています。
ナチュラル志向の方にはそば殻や羽毛なども人気ですが、それぞれに「匂いがする」や「虫がつきやすい」などの特徴もあるため、事前に理解して選びましょう。
汗をかきやすい方や肌が敏感な方には、吸湿性・抗菌性にも注目するのがおすすめです。
洗濯のしやすさ
枕は汗や皮脂、髪の汚れなどが蓄積しやすいため、清潔に保つには定期的な洗濯が欠かせません。中材ごとに洗えるかどうかは異なるため、丸洗い可能な枕やカバーが取り外せるタイプを選ぶと衛生的です。
とくに、アレルギー体質の方やニキビ・肌荒れが気になる方は、抗菌防臭機能のある素材や、こまめに洗える素材を選びましょう。
耐久性もチェックし、繰り返しの洗濯で形崩れしないかどうかも選定基準として押さえておくと長く使用できます。
自分に合った枕を見つけるためにねむりの相談所を利用しよう
自分に合った枕がわからないときは、ねむりの相談所を利用するのもおすすめです。
ねむりの相談所には、睡眠の知識を豊富に有するスリープマスターが在籍しており、普段の寝室環境や寝姿勢から、最適な枕の提案を受けられます。
さらに、ヒアリングを通じて、好みの硬さや寝姿勢、普段の生活習慣までも考慮してくれるため、納得感のある選び方が可能です。
購入後の調整サービスやメンテナンスにも対応しており、長く使える枕を安心して選べるでしょう。
枕は睡眠に重要!枕なしで寝るのは避けよう
枕なしで寝ることは一部の方にとって快適に思えるかもしれませんが、首や肩、呼吸の安定、睡眠の質など、あらゆる側面から見てリスクのある選択といえます。
とくに、「枕が合わない」と感じて外してしまっている方は、枕そのものを見直すことで大きく改善できる可能性があります。
自分の体格や寝姿勢、睡眠時の悩みに合った枕を使えば、深い眠りが得られ、起床時の不調も減少するでしょう。
今使っている枕に少しでも違和感があるなら、それは体からのサインかもしれません。枕なしで寝るのではなく、自分に合った枕を見つけて、快適な睡眠を手に入れましょう。
【参考】
※1 寝返りは していますか